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大人のための「シンプルな贅沢」。

〜「shokkan 龍土町」で食べたいひと皿〜

絵から生まれる、お店の「思い」と「オーラ」。

〜ディスカバリーを彩る水墨画のこと〜

「孤高の修業」から「みんなとつくる」花が咲く。【正木美則】

~DISCOVERYではたらく人々 第13回~

「極東」に、新しい「発見」。

〜和のクラフトビールに、和の美味を〜

ベースを包丁に。次の夢はここにある。【名田伊里也】

~DISCOVERYではたらく人々 第12回~

サービスの魅力を追い続ける男。【湯浅翔太】

~DISCOVERYではたらく人々 第11回~

幹さん、「世界演出」って何ですか。

〜ディスカバリーと、器のこと〜

酒とメシ、好奇心と数字。【田島正人】

~DISCOVERYではたらく人々 第10回~

さすらいの経歴を、多彩な武器に。【銘苅隼人】

~DISCOVERYではたらく人々 第9回~

豪胆と繊細で、たどり着いた場所。【渋谷洋輔】

~DISCOVERYではたらく人々 第8回~

一途な女、接客の花道を往く。【知野沙央璃】

~DISCOVERYではたらく人々 第7回~

「計画」と「冒険」の疾走。【金子将大】

~DISCOVERYではたらく人々 第6回~

静かに秘めた「修羅の魂」。【荻根沢勝利】

~DISCOVERYではたらく人々 第5回~

図面からまな板へ。彼女の真の「芯」。【小林祐子】

~DISCOVERYではたらく人々 第4回~

「人前が苦手な男」の、接客の醍醐味。【島村泰知】

~DISCOVERYではたらく人々 第3回~

ぜんぶ創って、みんなでやる。【佐藤 幹・後篇】

~DISCOVERYではたらく人々 第2回~

ぜんぶ創って、みんなでやる。【佐藤 幹・前篇】

~DISCOVERYではたらく人々 第1回~

大人のための「シンプルな贅沢」。

〜「shokkan 龍土町」で食べたいひと皿〜

今回のインタビューは少し趣向を変え、「お店のこのひと皿」。
たくさんあるメニューの中から「これを食べて欲しい」という料理について、コンセプトや作り方、おすすめコメントなどを調理しつつ語ってもらいました。場所はオープンして2ヶ月が経った六本木の「shokkan 龍土町」。語りは小澤料理長です!
(インタビュー・近藤あゆみ)

—-まず「shokkan 龍土町」(以下、龍土町)全体の料理コンセプトみたいなものはありますか?

「和食再構築」ですね。個人的なコンセプトとしては「素朴な派手」を目指したいなといつも思っています。
龍土町はお寿司を始め色々な系統の料理があるんで、全部おすすめなんですよ。昨日いらしたお客さんも「全部の視野があるからここはすごく使いやすいね」と。逆に色々な方面があるからよく分からないというお客さんもたまにいらっしゃいますけど(笑)実はメニューは他店(ディスカバリー系列店)に比べたらすごくシンプルです。メニュー表も一枚で終わるし。

他の食幹の看板である「ぱえりあ」もないので、それに代わる名物が欲しいということで色々試行錯誤しながらできたのが「海いろいろ盛り合わせ」です。あれを龍土町の顔にしていきたいです。

—-でも今日はあえて違う料理を。

はい。「牛の赤身ステーキ」「蟹と百合根の春巻き」「きんきと沖シジミのスダチ蒸し」の三品です。

 

■かつおだしを含ませた牛肉。試行錯誤の末に選んだのは…。

今日の赤身は肩三角。産地は北海道です。
肉にかつお出汁を含ませてあるのがこだわりですね。うちの牛肉には、全部出汁を入れてます。
出汁に浸けるのではなく、肉と出汁を一緒に真空パックにして浸透させるんです。そうすると浸透圧で肉の中に出汁がしっかり入る。その真空パックを一時間半くらいじっくり低温調理します。54℃くらいに保つんです。
肉は急激に熱を入れると縮んで固くなるので、低温でじっくり熱を入れることによって柔らかく仕上がりますね。
オーダーが入ったら一度フライパンで焼き付けた後、焼き台で仕上げの焼きをします。

—だから中がキレイな赤い色で、かつ柔らかくて風味があるんですね。

出汁は、最初はソミュール液みたいなのを作ってかけ焼きしてたんですけど全然出汁が入らなくて。それで真空パックにしてみたらいい感じだねとなって。そこから出汁の選定や塩分調整をずーっとやってました。
最初は普通のかつおぶしでやってたんですが、かつおの香りと味が強すぎて。じゃあまぐろぶしにしようとやってみたけどどうも違う。血合い抜きのかつおぶしでも違う。で、最終的に行き着いたのが本枯れ節(長い期間熟成をしたもの)です。味自体は穏やかなんですが、香りや旨味がしっかりしているので今はそれに落ち着いています。

—-そういうのは企業秘密とかじゃないんですか?

企業秘密はないです。どの店舗もないですよ(笑)

■「和食で春巻き」の妙。

—-次は「蟹と百合根の春巻き」ですが、春巻きって珍しいですね。

和食で春巻きを使いたくなってできた料理です(笑)
もともと中華の要素ですけど、和食でも活かしたいなと。みんな小さい頃から食べているおなじみの料理じゃないですか。あと「包んで揚げる」ということをしたくてチョイスしたというのがあります。

最初カニだけだったのが、百合根をプラスしました。百合根のほくほく感でカニの塩分を和らげようと。クワイでもいいかなと思ったけど時期が限られてる。じゃがいもにしちゃうとポテサラもあるし。他のメニューにかぶらず、通年出せてクセがなく食べやすい、それで百合根にしました。

—-揚げてる時のパチパチと軽やかないい音!動画にすればよかった(笑)

最初はそのまま食べて頂いて、その後パクチー酢につけてみて下さい。

—-おお、和食ですね。すごくさっぱりして美味しい。パクチー酢につけてもくどくない!パクチーの鼻に抜ける感じの青臭さが消えて柔らかくなってますね。

カニ酢の要領で、揚げた春巻きをパクチーを入れたお酢で食べてもらおうかなと。一緒に食べるとエスニックぽい春巻きになるんです。摩訶不思議が起きるんですけど、パクチー酢につけると何故かパクチーの香りが和らぐんですよ。パクチー苦手な人でも「意外に大丈夫だった」という声もチラホラ聞こえます。

—カニがみっちり入ってて、中華の春巻きみたいにバリバリした固さがなくて優しいのもいいです。

カニから水分が出るから、皮が少し柔らかいのかもしれませんね。
揚げ物の中で1、2くらいに出てるので、当たりかなと思ってます。ワインでも日本酒でも合いますよ。
最初に言ったコンセプトの「素朴な派手」の皿だなと思います。春巻きっていう素朴感と、カニやパクチー酢の派手さと…。矛盾してるようで同居してるんです。

■おなじみではない出汁ものを。

—-そして「きんきと沖シジミのスダチ蒸し」。沖シジミって初めて聞きました。まん丸くて大きい貝なんですね…。

はい。これは三重県産です。シジミの出汁にきんきを入れて。醤油は最後の仕上げにちょっとだけ。シジミの塩気があるので他には何もいりません。

これはメニューの「出汁もの」のところにある皿です。
出汁ってカテゴリだとさっき話したかつおぶしやまぐろぶしがあるんですけど、魚だけじゃなく貝の出汁もあるし、野菜のお出汁もある。ということで、貝ときんきという脂の多い魚の出汁で、潮汁みたいな料理をつくろうと。かつおだしじゃない出汁の料理ですね。これも龍土町ならではの「いろんな角度のアプローチ」の料理のひとつです。

 

—-確かに、ありそうでないですもんね。

「ありそうでない」がウチなんで。
すり流しは野菜とお出汁の料理。茶碗蒸しは卵とお出汁の料理。そんな中でみんなが知らない食材でつくった出汁料理がこれです。出汁ものの中では食べていただきたい一品ですね。すだちを絞って召し上がって下さい。

—-きんきが柔らかい…沖シジミも身がぷりぷりしてとても美味しいです。永遠に飲めますね。二日酔いの日に飲みたいくらい(笑)ほんとにシンプルでごまかしがきかないですね。

口の肥えた方々の集まる場所柄、凝った料理よりは、すごくシンプルに削ぎ落としたものをと思っています。

■厳しいお客さんの舌を飽きさせないために。

—–六本木は、渋谷やソラマチとはお客さんの感じがかなり違うと思うんですが。

まだオープン2ヶ月くらいですが、近所に住んでいる方々が食べに来られるんですよ。六本木には和食店が少ないから色々なお店を回っていて、そういう方々が言うには「いいものと美味しいものを出さないとこのエリアの人はすぐ逃げちゃうよ」と。だからお客さんを飽きさせないでいい料理を出していきたいなと思います。

渋谷とかは世間に知られてきているので、目的型として使う方も多いんですけど、龍土町はローカルコミュニティから口コミでどんどん広がって大きくしていきたいなと。手厳しいお客さんも多いですが、その高いハードルを越えていきたいですね。

—-確かにメニューの大人感が強いですよね。

ぶっ飛んだ料理はだめだろうなと。さっきの「素朴な派手」じゃないですけど、派手さもありながら、食べたら意外に落ち着けたり。海盛りは派手ですけど、それ以外はそうでもないですし。

懐石料理なんかも経験してきたから言えるんですが、見た目もキレイで季節感もすごく出てるんだけど、美味しいかっていうと…ね(笑)そういうのはそういうお店に行けばいいので、うちはやはり「食べてちゃんと美味しい」がいちばんいいと思っていますから。

このあと「ハマグリと葱の煮ふかし」というお料理も頂いてしまいました。はまぐりのお出汁とねぎ。ものすごくシンプルだけど身体中にしみわたるような優しさと旨味、滋養感があるひと皿。お酒の締めにも、お寿司の締めにもおすすめしたいです!

素材をとことん吟味し、ふんだんに手間をかけているけど出来上がりはとてもシンプル。小澤さんの言う「素朴な派手」がそこかしこにいぶし銀のように輝いているお料理が多い気がします。大人のひと皿を味わいたいなら、ぜひ龍土町へ…。