CREW

サービスの魅力を追い続ける男。【湯浅翔太】

~DISCOVERYではたらく人々 第11回~

幹さん、「世界演出」って何ですか。

〜ディスカバリーと、器のこと〜

酒とメシ、好奇心と数字。【田島正人】

~DISCOVERYではたらく人々 第10回~

さすらいの経歴を、多彩な武器に。【銘苅隼人】

~DISCOVERYではたらく人々 第9回~

豪胆と繊細で、たどり着いた場所。【渋谷洋輔】

~DISCOVERYではたらく人々 第8回~

一途な女、接客の花道を往く。【知野沙央璃】

~DISCOVERYではたらく人々 第7回~

「計画」と「冒険」の疾走。【金子将大】

~DISCOVERYではたらく人々 第6回~

静かに秘めた「修羅の魂」。【荻根沢勝利】

~DISCOVERYではたらく人々 第5回~

図面からまな板へ。彼女の真の「芯」。【小林祐子】

~DISCOVERYではたらく人々 第4回~

「人前が苦手な男」の、接客の醍醐味。【島村泰知】

~DISCOVERYではたらく人々 第3回~

ぜんぶ創って、みんなでやる。【佐藤 幹・後篇】

~DISCOVERYではたらく人々 第2回~

先月からスタートした、ディスカバリーで働く面々の素顔を知るインタビュー。第二回めは代表・佐藤幹【後篇】です!
株式会社ディスカバリーを2007年に設立、翌2008年に渋谷に「食幹」をオープン。こうして初めて「雇われていた側」から「雇う側・経営する側」になったわけですが…。
会社や組織についての考え方も、聞いてきました。
(インタビュー・恩蔵あゆみ)

DSC06535

 

■人を「雇う」ことの難しさ

ここのハコ(渋谷「食幹」)は結構大きいので、最初から10人くらい雇いました。人を雇ったことないのにいきなり10人雇ったから大変でした。そこで雇用のむずかしさを知ったという。
それまでの「雇われ料理長とスタッフ」の関係と違ってこちらは雇っている側だから、今まで通りにいかなくて苦労しましたね。いちばん違ったのは温度感。友達みたいに仲良くしすぎたので、線引きがなくなってしまった。
ああ、これは「人」重視にしないとなと思いました。だから当時は藤田さん(藤田晋・サイバーエージェント社長)の本ばっかり読んでましたね。
悩んでいた時、他の経営者の方に「大丈夫、いい時と悪い時はどの会社でもあるんだから。ユニクロだって悪い時あるんだよ」と言われてすごく心に響いたんですけど、でもどうしても重く考えてしまいますよね。だから三店め、広尾の「小野木」出してからですよ、こんなふうにライトに語れるようになったの。長かった…10年(笑)

 

■ディスカバリーの特徴とは

—-なるほど。ではそういう苦労を経て、今のディスカバリーってこういう場所だよ、というのはありますか?

働きやすい場所だと思う。でも、ラクって思われちゃうといやなんだけど(笑)
まず我々はやはり飲食業を超リスペクトしてるんです。拘束時間であったりとか、ものの考え方、将来性も。だから飲食業好きにはぴったりな好環境だと思いますよ。
僕自身もプロダクトを考え続けてきて、全員がいろんなポジションでいろんなお店をつくってる磨いてる、そういう設計をしています。

—-入って「自分の新しいことをやりたい」と思ったら実現できる?

そうですね。
「やりたい!」だけだとただの自己実現になっちゃうけど。技術、知識、見識を身に着けて、経験も積んで、モノの見方とか発言とかが通るようになってからならできますね。
やっぱり大人を喜ばせないといけないんです。いろんな職業のプロフェッショナルの、美味しいものを食べ歩いてるようなお客さまを喜ばせないといけないから。だから飽きずに打ち込める職場だと思うんですよね。逆にお客さんから教わることも多いと思う。
いま、いい雰囲気なんですよ。ちゃんと夢持ったり目標持ったり、食好きな人が集まってるんで、ありがたいです。

—–徒弟制みたいな厳しい上下関係とかはない?

昔はありましたよ。僕も怒鳴ってたし。でもそれをどこかで断ち切らなきゃいけないねっていう計画を出して、突き進みましたから今はない。僕も最近ここ一年くらい、ウオーッて怒ったりとかしてないです(笑)だからいい循環ですよ。

—–さらにディスカバリーは、経験を積んだ人が独立して去るのではなく、店名やコンセプトの違うお店をディスカバリーの中で立ち上げる、社内ベンチャー企業のようなかたちを取っていますよね。

いち料理人が雇われて料理長でゴールするっていうよりも、もっともっと将来が築けると思ったんです。
修業して料理長になったら独立してすぐ自分でお店やって…っていうと、せっかく育てて投資したものがもったいない。やっと育った後、その人が好きなことがもっとできるようになる、そういうのを設計するのがいいなと。だから会社主導というかプロダクト主導型に変えたいと思ってました。

—-ひとりでやって独立したら、全くゼロからのスタートですもんね。

そう。せっかく1人1人いろんな力を持っていたのが分散していくから、日本の料理って細々しくなってて散りぢりになってて、一体感がないんですよ。
そのひとつひとつはもちろん美しくかけがえがなくて一期一会でいいんだけれども、そうじゃないやり方を追求したいというのが、ディスカバリーなんです。

 

■「みんなでつくる」と「当事者意識」

—「ディスカバリーに入ると他にこんなイイことが」というのはありますか?

技術だけじゃなくて、仲間が増えます。
中に入っちゃうと情報オープンだし、レシピもオープンだし、スキルとかもみんなでどんどん伸ばしていける。けっこう宝の山だと思うんです。
なおかつ会社として新しいことにチャレンジしていくから、事業にも参加できる。基本的なことはもちろん学べる。「店舗が広がるから手抜きになる」んじゃなく、「広がるから組織が強くなっていく」感じ。フォローしてくれる人や相談者も増えるんです。
料理も僕だけが考えてるわけじゃないし。僕がいて料理長がいて副料理長がいて、あとマネージャーからも意見が出てきつつ、「こういう料理にしない?」と座談会みたいにしていたりとか。
たぶん小料理屋とかだと「ひらめいた!」って料理長がつくって…ってなるけど、うちはみんなでやってるところがある。

——-そこが会社形態のいいところですね。

そう。だからプロジェクトみたいにしてるんですよ。会議ベースにしたりとか、そういうかたちが最近面白くて。「料理ひとつ考えるのにこんなに人がからむんだ」というのが。いいことだと思ってます。
社名のディスカバリー、「発見」って言葉はいいなと我ながら思っていて。いい仕事見つけていこうぜとか、いいこと発見しようとか、キックオフ的な響きがありますし。

—-料理人として入ってとりあえず料理だけ作ればいい、だけじゃないと。

そう。だってもし料理長になって「作りたい料理はこれ」って言っても、売れなかったら意味ない。マーケットを見なきゃいけないし、お客さんはどういうもの欲しがってるのかとかもつかんでいかなきゃいけないし。

—-そのやり方はみんなでしょっちゅう検討してるんですか?

そうです。そうして「料理を作れる→責任者になった」という人が、今度は売れるものをつくれるとか、お客さんや場所やコンセプトに沿ってものを考えられるようになれるとか、人を育てることができるとか。
だから「料理長になった、やった!」っていうよりは「料理長になったから、さあ(何をやろう)!」っていう感じだし、みんなにもそうあってほしいと思います。藤田(晋)さんが言う「当事者意識」というのはそういうことだなと。
うちで子会社があってもいいし、うちらしい会社があるんだったら、焼き鳥屋さんでも何でもつくってもいいと思うんですよね。

もちろん料理人だけじゃなくサービスマンもね、お客さんの欲しいモノとかのマーケティングや営業がうまいわけだから、「こうやって売りたい」とか、そこから商品を考えてもいいし。とにかく「飲食業が大好きな人あつまれ!いろんなことをやれるぞ」と。

 

■長く続く。果てしなく広がる。

それぞれ自分のペースで働けるようにしていますが、ちゃんと骨格と理念と料理観がある。各々、70%のパワーで常にいいプレイができるような環境を整えているつもりです。「毎日100%フルスロットルでいこうぜ!」っていうのもいいけど、うちはそうじゃないのかなと。ずっとレッドゾーンでいると疲れちゃいますから。

個性は大切にしていたい。その人の分かとかアイデアとかが仕事でも活かせるかもしれないですし。
お店はつくったらずっと続いてほしいし、ずっとやらなきゃいけない。そうするとルーティンが大切だから、やたらモチベーションを上げた「うおー」ってやり方をすると、息切れしてしまうんですよ。「ああこれ以上つきあっていけない…」ってギブアップさせることになっちゃう。
だからマイペースでやっていけるのがいちばんいいんです。モチベーションはそれぞれ個人が個人で各々で、という。

それで出てきたのが、「ずっとひろがる和食カンパニー」っていうことばですね。
単なる「和食」「会社」「日本料理屋」ではなくて「和食カンパニー」にしたのは、組織感があることばだから。「日本料理」っていうと固くなるし、トータルでいうと「和食」だよね。
で、オーナーとして一軒つくって僕が裕福になったらもういいだろう、とかそういうのじゃなく、「みんなの可能性がある限り、あり続けます、広がり続けますよ」という。

いい意味での組織感というか、プロジェクトの融合体ですね。アメーバーのように、かたちを変えてどんどん広がるカンパニーにしたいなと思っています。

DSC06565
「この仕事だけ極めればいい」「独立したらサヨナラ」
…業界としては当たり前かもしれないことも、ディスカバリーでは当たり前じゃない。どの職種のスタッフも皆で交わりながら新しいことをどんどんつくっていく…。ひとつのお店、ひとつの枠にはまらない「広がる融合体」としての未来が、幹さんとディスカバリーから、これからもたくさん生まれそうですね。
さて、次回からはいよいよ現場スタッフが登場します!