CREW

大人のための「シンプルな贅沢」。

〜「shokkanryudo-cho 食幹龍土町」で食べたいひと皿〜

絵から生まれる、お店の「思い」と「オーラ」。

〜ディスカバリーを彩る水墨画のこと〜

「孤高の修業」から「みんなとつくる」花が咲く。【正木美則】

~DISCOVERYではたらく人々 第13回~

「極東」に、新しい「発見」。

〜和のクラフトビールに、和の美味を〜

ベースを包丁に。次の夢はここにある。【名田伊里也】

~DISCOVERYではたらく人々 第12回~

サービスの魅力を追い続ける男。【湯浅翔太】

~DISCOVERYではたらく人々 第11回~

酒とメシ、好奇心と数字。【田島正人】

~DISCOVERYではたらく人々 第10回~

さすらいの経歴を、多彩な武器に。【銘苅隼人】

~DISCOVERYではたらく人々 第9回~

豪胆と繊細で、たどり着いた場所。【渋谷洋輔】

~DISCOVERYではたらく人々 第8回~

一途な女、接客の花道を往く。【知野沙央璃】

~DISCOVERYではたらく人々 第7回~

「計画」と「冒険」の疾走。【金子将大】

~DISCOVERYではたらく人々 第6回~

図面からまな板へ。彼女の真の「芯」。【小林祐子】

~DISCOVERYではたらく人々 第4回~

「人前が苦手な男」の、接客の醍醐味。【島村泰知】

~DISCOVERYではたらく人々 第3回~

豪胆と繊細で、たどり着いた場所。【渋谷洋輔】

~DISCOVERYではたらく人々 第8回~

第八回は、食幹ソラマチ店の渋谷洋輔です。ディスカバリーで最年少のマネージャー就任。一体何歳?どんな人?「落ち着いていて慌てることがない」という評判通り、インタビューではクールガイ(というかシャイ…?)でしたが、さてさて。
(インタビュー・恩蔵あゆみ)

 

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■アルバイトからいつのまにか…。

いま22歳です。(※取材日は昨年12月)2017年元旦で23になります。生まれた瞬間に運使っちゃったんですよ(笑)

—いまのお仕事を教えて下さい。

役職はソラマチ店のマネージャーです。仕事内容は発注からシフト作成から…ソラマチさんと色々やりとりもします。対外的な打ち合わせも全部ですね。フロアでは僕ともう1人が社員であとはアルバイト。社員じゃないから、彼らのモチベーションを上げることなども色々考えつつ全体を見る。というわけで、全部やる感じですね(笑)

—ディスカバリーに入ったのは?

最初はアルバイトから入りました。高校卒業して専門学校に入った時、2012年ですね。
ソラマチ店で先に友達が働いてたんですよ。バイト探してて「どこかない?」て聞いたら「ウチはどう?」と。週2か3でやってました。純粋にお金を稼ぐためだったので思い入れは特になく。2年間続いたのも、新しく探すが面倒なので続けていたという…(笑)

—そのままソラマチに残った理由は?

スポーツ系の専門学校だったんですが、就職先がスポーツショップの販売員以外、ほぼない。そういうのじゃないんだよな…と思い。まあ予想はしてたんですけど、専門卒がスポーツメーカーでいきなり働けたりしない。で、就活せずにそのまま。

—バイトからそのまま社員になるって、よほど思い入れがあったのかと(笑)

いや、もうやるしかなかったんですよね。探せば他にあったかもしれないけど、とりあえずやってみようかなと。「将来この業界で…」というのもなかったんです。

—すごいフーッ…て入ってきましたね(笑)

そう、フーッて入りました(笑)いやだと思うところも特になかったし。

—社員になって変わったことはありました?

最初は分からなかったですね。自分の中ではバイトとは違うって思うんですけど、やっぱりどこか延長線で考えてしまうところがあったと思います。
(意識を変えた)きっかけは特になくて、やっていくうちに「このままの意識じゃダメだな」と。シンプルに責任感が全然違ったので。バイトなら上に投げればいいことも、自分が謝らなきゃいけなくなった。それとバイトの子たちの意識とかも全て僕次第になったので。
 

■「出戻り」からハラが決まった。

—渋谷さんはその後一度ディスカバリーを抜けてるんですよね?

色々あって…若かったんですかね(笑)
それで4社くらい飲食店の面接受けて全部受かったんです。その中でいちばん条件のいい汐留の42階のレストランで働き始めた。でもやることがアルバイトと一緒で。単純にオーダーとって、作業。以上、みたいな。それが面白くなかった。
客単価2〜3万くらいで学ぶこともたくさんあったんですけどね。みんなよくしてくれたし、僕も頑張ったんですけど。バック厨房だったのでホールとキッチンは完全に分かれていて、席も100席以上あって、キッチンさんとは全然関わらない状態。

—「ここに俺の熱意をかけるものはないかな」みたいな?

そうですね。お店自体がまとまってなかった感じだったので。そこには3ヶ月しかいなかった。それで「とりあえずディスカバリーに戻ろう」って思いました(笑)出戻りってレッテルは貼られるだろうけど仕方ないなと。

—渋谷さん、あまり物事に動じないタイプですか?

はい、あんまり気にしないです。

—自分の中に確固たる主義や哲学があるからでしょうか。

なくはないと思いますけど、「これだ!」っていうのはよく分からない(笑)でも、接客していてもお客さんが次なに考えるとか、わりと分かる方だと思うんです。この人多分こういう人だなとか、大体当たるタイプかもしれません。

—辞めることが続いて、落ち込んだりはしませんでしたか?

いや全然(笑)とりあえず何とかなるだろう、と。戻ったからもう次のチャンスはないと思ったので、そこで初めて腹が決まって、そこからはもうしっかりやらせてもらってます。戻ったのは2015年の2月で、その年の10月にアシスタントマネージャーになりました。

—見事に結果を出したんですね。普段どんなことに気をつけて働いていますか?

「お客さん第一」なのは基本ですよね。何が欲しいのか、そのテーブルに何が必要なのかすぐ察するのは基本。それは常に考えています。もうすぐ呼ばれるなとかも、感覚で分かりますし。

—自分なりのこだわりとか、これは得意だなと思うことなどは?

「お客さんの気持ちを汲み取ること」ですかね。優先順位はお客さんが一番で。もちろん料理を見つつ、他の従業員の動きも見つつ。今はそれができますけど、戻って最初の頃はもうお客さんのことだけですね。決められた担当の場所をミスのないよう気をつけて…という感じでした。

—お客さんに「すいませーん」と呼ばせないとかも?

それは基本ですね。「すいません」と言わせてしまったらもう遅い。居酒屋とかなら全然いいですけどここではダメ。バイトの子にもそれは言ってます。自分もバイト時代にはできてなかったと思うけど。いつからできるようになったとかよく分からないんですよ。ある日急にできたりはしないんです。筋トレと一緒じゃないかなと。

—ちょっとずつ積み重ねてトレーニングしてたらいつのまにか「この重さいけるな」みたいな?

そうですそうです。だから「僕独自のこだわり」や「きっかけのエピソード」みたいなのはなかなかないんですよね。

—すごく失敗したこととかありますか?

お客さんに飲み物かけちゃったことはあります。1回だけ。アルバイトのときですけど、飲み物持って行ったときに倒してバーッとこぼしましたね、お客さんに。

—接客上の大きな失敗はそれくらい?

そうですね。ミスには絶対に気をつけてます。なので、下げものとかも無理して持って行かない。別に急ぐ必要がなければ一度にたくさん下げたりしないようにします。焦らないように。それは気をつけてますね。

 

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■進学校から異色の進路。今はこれしかない。

自信というのはそんなにないですよ。あ、もちろんなくはないです。でもありすぎないですね。ただ「あの時ダメだったな」とかは思わない。後悔はしたことないですね。
中学の成績なんて上から数えた方が断然早いくらいで、高校もかなりの進学校へ行って、でもそこで周りと違ったんですね。色々あって友達もできなくて。半分以上がMARCH(明治・青山・立教・中央・法政)行くような学校。そんな中で専門学校行ったからコンプレックスみたいなものはあります。それでも勉強を選ばなかった。「勉強しときゃよかったかな…」っていうのはないんですよ。
今はこれしかないと思ってやってます。追い込まれた方がやるタイプかなと。「とりあえずはここでやるだけやらないと」という。天職とまでは思ってないです(笑)でも、嫌いじゃないから続いてるんですよね。

—当時、大学入ってから就職して…っていうルートは考えなかった?

「4年間ムダだな…」と思ってしまったんです。行く意味が分からなかった。早くお金がほしかったのかな。多分行っても辞めてたと思います。で、最短で就職できてスポーツだし…と専門学校入ったけど違いましたね。
でもそこからはディスカバリーに関わっている時間が一番長くて、出戻って今も続けているということは、自分の中でやりがいを感じている…ってことかもしれない。
今は楽しいです。(理由は)周りの方々ですね。一緒に働いている人たち。いまのソラマチはチームワークがいいと思うんです。バイトの子以外は全員僕より年上ですけど、それは特に苦にならないです。

—アシスタントマネージャーからマネージャーになる打診があった時は、どう思いました?

田島さん(ディスカバリー取締役)と武藤さん(ディスカバリー専務)に呼ばれて。「何かやったかな俺…」と思いながら行って(笑)そしたら「マネージャーに」と言われて。泣きましたね。

—えっ!

なぜか分からないけど、泣きました。今まで特に何も言われずに淡々と黙々とやってきたんですけど、認めてもらえたのがうれしかったんだと思います。
田島さんは僕のこと分かってるからあえてだと思うんですけど、それまで全然褒められたりしなかったんで、余計。

—たまに褒められたりしないとどう評価されてるのかわからない、って思ったりしませんか。

それはないですね。だったらやって結果を出す。「褒められて伸びる」とかはないです。それって超甘いじゃないですか。

—そ、そうですね…ストイック…。でもそこで涙したっていうのは思いが強いんですね。では1も2もなく。

「ありがとうございます!」と。

—マネージャーになって変わったところは。

めちゃめちゃ変わりましたね。重さというか、責任が。より一層、集中しないといけないなと。

—人の管理がよりいっそう増えますよね。

それはアシスタントマネージャーの時からそうでしたね。シフトも「俺やりますよ」っていってやってたので、その時から考えながら組んでます。まあ早く何でもやりたかったので(笑)

 

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■平等であること。一体感があること。

—アルバイトのスタッフを管理する時に気をつけていることって何ですか。

「平等」ですね。誰も特別に可愛がらない。
評価は他人がするので、できてるかできてないかは分からないですけど、僕の中としては平等に。えこひいきなく、男だから女だから、可愛いから可愛くないからとか、そういうのはなく。特に女性は平等に扱わないとすぐに伝わる。そこは本当に気をつけています。

—キッチンとの関係は?

そこもコミュニケーションとっています。キッチンさんもみんな話しかけたりしてくれるんで、バイトの子も恐れたりしないですし。そういう意味で今すごくいい環境ですね。最近はみんなに気軽に話しかけるようにしてます。「あの子疲れてるな」と思えば気を使ったり。

—意識が足りないなと思う人に対してはどうします?怒ります?

話しますね。説明します。確かにそこは難しいんですけど、しょうがないんで。そんなに強要とかはしないです。
組織の中で意識の差は出てきますけど、全体である程度の差の範囲内でとどめておけるようにパランスとってますね。

—「こんなこと当たり前だろ」と思ったりとかはないですか?

あまり思わない。最初は思ってた時もありますけど、それに腹を立ててもしょうがないなと。ただ「違う」と思ったことは言う。「これは違うんじゃない?俺はこう思うけど」って言います。でももうほんとにみんな大人なんで。バイトで学生もいますけど、いまは苦労してないですね。

—これから渋谷さん自身がこうなりたいとかってあります?

このまま…ですね(笑)いい意味で。

—役職的にもっと上にいきたいとかは?

それはまだいいです。まだまだだと思うんで。逆に言えば「まだ(上にいけないの)?」くらいに自分で思えるようになれたらいいですけど、全然なので。いまは目の前のことを一生懸命やるだけです。

—ソラマチ店をこういうお店にしていきたいなというのは?

こっち側も楽しくて、お客さんも楽しい気分になれたら一番だなと。
お客さんはある程度のサービスを受けて美味しいもの食べれば満足はしてもらえると思うんですけど、こっち側は楽しいかどうか、いちばん難しいところで。逆にそこが楽しければ、お客さんもさらに楽しくなれるのかなと思います。

—接客業における「楽しさ」って何でしょうね。お客さんに喜んでもらうこと?

それもありますし、従業員の間でいちいちコミニュケーションをとらなくても済むくらいの営業ができればすこくいいなと。コミュニケーションの量ももちろん大事ですよ。でも「この人こう考えてるな」って全員が共有できればすごく強い。
一体感というか、お互いのことを何となく分かっている感じ。そうすればサービスにも余裕が出てきて質も上がると思うんです。そのためにはお互いへの思いやりが必要ですね。

—渋谷さんは仲間愛は強いですか?

そう…かもしれないですね。出さないですけど(笑)

—ディスカバリーのいいなと思うところは。

今風なところ(笑)堅苦しくないところがいいと思います。僕なんか22でマネージャーにしてもらっている。飲食って基本的に年功序列ですからね。確かに年功序列じゃなくなると生産性が落ちたりする部分はあると思うので一長一短ですが、若い子にしたら面白くないんですよ。なので若い僕としてはこういう会社は好きです。上下がないというか、チャンスがあるのがいいなと。

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■「ソラマチで食べる理由」がある。

—ソラマチ店は新しい企画をどんどん打ち出すところが独特ですよね。

今は何でもやるしかないんでと思ってます。今のところ結果は出ていますね。

—ディスカバリーの他の店舗と違って、ソラマチという施設に左右されるところがある。そこの長所短所はやはりありますか?

ウィークポイントは多いかもしれませんね。ソラマチ自体の年間来客数は年々下がっているし。でもその中でうちはキープというか、比例して下がってはいないんです。今年に入ってから下降しかけたんですが後半からは戻ってきたので、企画の効果はあるのかなと。
お客さんを逃してるとは僕たちは思ってないんですよ、バイトの子でさえ。逃すようなサービスしてるつもりはないから。でもリピートは施設柄難しかったりするので、色々やっていくしかないと。
ソラマチさんから「水族館のチケット見せたらワンドリンクサービスどうですか」とかあるので、今はそういうの全部やるようにしてます。

—とにかく企画は全部のろうと。

フロア担当の方と仲良くさせてもらっているんで、密に話して。ホームページのことも色々聞いて。前までは「そういうのはいいか」って言ってたんですけど、今は何でもやってみようと。30階にはフラッと入ってくるのが難しいのでね。

—逆に30階かっこいいですけどね。エレベーターが別ですよね。みんなの混雑から抜けてあそこで待機する特別感、逆手にとれないかなと。あと、スカイツリーに来なそうな人たちが行く理由ってありますか。「うちに来たらここがいい!」みたいな。

景色がいい!(笑)あとは、気楽に食事できるんじゃないかな。夜景見ながら気楽にごはん食べられるとこってあんまりない気がするんですよ。

—確かに。30階で、のれんがドンとあって、入ったらこの夜景で。一瞬身構えるんですけど、でも気楽に食べられるという。

そこがいいと思うんです。本当に堅苦しくないですし、でも安っぽくはない。そこを僕は常に意識していますね。

—きちんとしたお料理とサービスがある。でも緊張する場所ではない。

そうですね。そこがウリです。
デートだとしたら、女の子的にも楽じゃないですか。バッチバチのとこに連れて来られると怖いけど(笑)ここならちょうどいいと思うんです。でも景色とサービスと味にはきちんと満足してもらえる。

—なるほど、そこが推しポイントですね。
最後に、ディスカバリーで働きたい人にメッセージはありますか。例えば渋谷さんと同じようにフロアで働きたい人。

一緒につくっていきたいですからウエルカムですね。
いまはとりあえず目の前のことを一生懸命。12月まではいい調子できてくれたので、1月以降もっと盛り上げていきたいです。

—プライベートはありますか?

お酒が好きなので飲みに行きます。地元が京成立石で、もう飲み屋しかないんで(笑)あとは温泉が好きです。二連休とれたら絶対温泉。近場も行くし、先日は金沢の温泉に行きました。休みのときに身体だけ休ませてもしょうがないので、家でゴロゴロすることは月に一度あるかないかですね。

 

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自分を多く語らない。思いを簡単に教えてくれない。そして照れ屋さん。なかなかインタビュアー泣かせの渋谷さんでしたが(笑)合間にチラリとのぞく熱さが、彼の真の姿なのかなと思います。

「どこか憎めないキャラ。肝心な部分は抜け目なくやるし、要領がよくこの若さで実に処世術に長けています。これは努力して後天的に身につくものではなく、先天的なもの。持って生まれた最大の武器といっても過言ではないでしょう。物事に対してポジティブシンキングができることも彼の強みです」(田島談)
「お客様への対応も良いし、新入スタッフに教える時も解りやすく伝えられる。『こいつなら店舗をまかせられる』と思わせてくれる」(武藤談)

ソラマチ店もこれからの彼も、どんどん大きくなっていく予感がひしひしとしています。