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ベースを包丁に。次の夢はここにある。【名田伊里也】

~DISCOVERYではたらく人々 第12回~

サービスの魅力を追い続ける男。【湯浅翔太】

~DISCOVERYではたらく人々 第11回~

幹さん、「世界演出」って何ですか。

〜ディスカバリーと、器のこと〜

酒とメシ、好奇心と数字。【田島正人】

~DISCOVERYではたらく人々 第10回~

さすらいの経歴を、多彩な武器に。【銘苅隼人】

~DISCOVERYではたらく人々 第9回~

豪胆と繊細で、たどり着いた場所。【渋谷洋輔】

~DISCOVERYではたらく人々 第8回~

一途な女、接客の花道を往く。【知野沙央璃】

~DISCOVERYではたらく人々 第7回~

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~DISCOVERYではたらく人々 第6回~

静かに秘めた「修羅の魂」。【荻根沢勝利】

~DISCOVERYではたらく人々 第5回~

図面からまな板へ。彼女の真の「芯」。【小林祐子】

~DISCOVERYではたらく人々 第4回~

幹さん、「世界演出」って何ですか。

〜ディスカバリーと、器のこと〜

ディスカバリーのお店でお料理を食べると、自然と「この器いいな…」「味のあるお皿だなあ」などと思うことが多い。普段ほかの料理屋さんで器を気にするほどの造詣がない私(ライター)だが、そんなド素人ですらそう思うということは、ディスカバリーの器はそれだけ個性的なのかもしれない。そこに載る料理とお互いを引き立て合い、独特の世界を形作っているような気がするのだ。
というわけで今回はスタッフインタビューはお休み。ディスカバリーの器に対する取り組みや考え方を、佐藤幹社長に聞いてみた。
(インタビュー・恩蔵あゆみ)

■陶芸家さんに「一緒にお店をやろう」

うちは全部ではないけど、できるだけ個人で作陶してる人から買いたい、というのがあります。
お店をやる時は商社から大量に既製品的なものを買うのが普通なんですが…器を作る人の意図が分かっていなくてただ「雰囲気がいいから使う」だと、一体感がない気がして。

みんなまず「料理、料理」っていうけど、料理って何かに載せないと人に出せないんですよ。料理だけで完成じゃないんです。それを受けるものがないと。

—なるほど。器が素敵じゃなかったら料理も色あせてしまう可能性もありますね。

そうなんです。しかも「この料理にはこのお皿の色が合うね」とかだけじゃなくて、作り手さんとのマッチングがあると思うんです。
そのマッチングをディスカバリーで初めてやってみたのが「いいと」。あと「小野木」もそう。いいとに関しては陶芸家さんに「一緒に寿司屋をやりましょう」って言いました。それは別にお金を出して共同でとかじゃなくて「こういう寿司屋をやるから、それに対してあなたのアプローチを下さい」という意味ですね。

「こんな寿司屋をやる」というコンセプトを投げて、陶芸家さんが色々想像するところから始めました。「これに卵焼きがつまみで載っていたらちょうどいいな」とか「この色にまぐろの握りが一個載っていたら」とか。多分そういうことから考えるんでしょうね。

—実際のメニュー案も渡しました?

メニューではなく感覚のすり合わせですね。「こういう雰囲気で食べたい、こういう食材を使いたい」という感じの。

—-陶芸家さんからすると、そういうオファーは珍しいのでは。

陶芸家さんは自分で展示会を開いたりお皿屋さんに納品したりして、お客さんが「じゃあこれにきんぴら載せようかな」とか思って買うじゃないですか。そういう意味では特殊ですよね。

きっと陶芸家さんも店づくりと一緒だと思うんです。自分の家の食卓で「こんな皿あったらええなあ」と思って作り、納品して売れた売れないを聞いて「なんでかな」と思ったり。料理屋もそう。メニュー考えて渾身の一品出して、でもあまりにも自分本位すぎてお客さんがついて来れなかったりとか。
お皿の形、雰囲気、自分の皿づくりのコンセプト。料理人と同じようにあるんですよ。それをマーケットに出して反応を見ながら自分も変化していく人と、かたくなに芸術家としてやってく人と、きっと色々でしょうね。

—-いいとを陶芸家さんと一緒につくろうと思ったきっかけは何ですか。

「佐藤くんにはこの人がいいんじゃない?」ってアテンドしてくれる人がいて、余宮隆さんと川口武亮さんと知り合いました。です。余宮さんは東京で個展が始まると行列ができたりする人なんですが…僕と相性がいいんですよ。
余宮さんは熊本県の天草。川口さんは佐賀県の有田。2人とも有名な陶芸家のところで修業した人で、僕と年が近い。同じカルチャー、同じテレビや音楽や遊びを経てきた人。現代的な人です。ライフスタイルが出ているというか、ディスカバリーのやり方と一緒だなと思ったんです。基本や伝統を大切にしつつ自分たちの文化をつけ加えるような人たち。モダン&トラディショナルみたいな。

—-「一緒にやろう」って、結構大きなプロジェクトですよね。

そうですね…いいとの、あれだけの量の器をつくるんですから、一回個展やるのと同じくらいの枚数なのかな。その人を一ヶ月拘束しなくちゃいけないから大変でした。その人個人の個展のプランニングがある中に、うちの店のためのプランニングを入れてもらうわけだから。「それでも一緒にやりたい」って熱意をぶつけました。

—確かに枚数すごいし、種類もかなりありますよね。

寿司屋だからまだ少ない方ですけどね。和食はさらに使う。茶碗、煮物、焼き物、前菜、刺身、デザート…全部形状が違うんで。
最近ガラスに載せたりもしてますけど、また違う人です。これは商社のオーダーメイドで、手作りなんですよ。超一点もの。ガラス職人もだいぶ減ってきたるみたいですよ。すっごい大変だから。溶鉱炉みたいなところに一日中いなきゃいけないんで。
陶芸家も、窯入れして、登り窯なんかで火入れして薪くべて。恐ろしいですよ、電灯もないような山奥で1人でやるんだから…孤独ですしね。だから「陶芸家になる人なんて変わり者だ」って自分たちでおっしゃってました(笑)

いいとのお皿はお客さんに相当ほめられるみたいです。そういえばこないだ言われました、「ディスカバリーは余宮マニアだからね」って(笑)分かる人には分かるんでしょうね。
でも陶芸家もうれしいんですよ。「僕のお皿を置いてる寿司屋があります、しかも東京に」と。だからこのプロジェクトは陶芸家さんの価値も上げているんじゃないかと僕は思います。

■作り手と買い手は、直接つながらなくちゃいけない

—-食幹を立ち上げた時はお皿はどうしたんですか?

有田の商社です。その商社さんに会いに佐賀に行って陶芸の場所めぐりした時に実際に作ってる人たちと会えて結構感動しました。こういう人がつくってるんだなあ…と。

その時に思ったんですが、店から作家に直接オーダーされると商社の存在意義なくなっちゃうから、どうしても作り手と買い手は引き離されてるんだなと。情報を閉じられちゃうと、僕らは作り手のお皿に対する温度が分からない。だから本当は作り手と直接話したいわけですよ。

日本の業界ってわりと全部そうなんです。例えば酒屋さんも営業マンのことは知ってるけど実際にお酒を作ってくれてる人自身には会ったことない、みたいな。日本だけがそうなのかどうかは分からないけど。あまりにも間を引き離しすぎちゃってて、生産者とそれを使う人がマッチングできてない。ご縁がないんですよ。だからこういう企みがしたかった。

陶芸家が自分たちで販路を見つけて料理屋さんに卸すのは、ほんとは花形だと思いますよ。「あそこの三ツ星の料理屋は俺の皿だから」みたいなね。でもそういうご縁がめったにない現状で、こうして陶芸家から直でフルプロデュースしてもらったっていうのはすごい貴重なことだと思います。
現地に赴いて、人間関係も構築して…しかもある程度人気のある作家さんだといきなり「○枚作って」とか言えないですよね。乗ってもらえないですもん。だからウチ結構頑張ったんです(笑)

—-お店に使う器を選ぶときのポイントってありますか。

地味であること。…滋味かな。
ほっとする感じ。コンフォートな感じ。懐かしみがあるとか。滋養感があるのがいいかなと思うんです。だけど新しいという。

—-土の匂いのするような器が多いですよね。いい意味で太いというか。

そうですね。繊細なのかもしれないけど、繊細そうにみせてない。
お皿の色ってね…釉薬っていう還元させるような粉がついてるんだけど、それとは別に窯の中で薪の灰が舞って、それが器にくっつく場合もある。灰って温度が違うからそこだけ変化するんです。もともと釉薬が灰の一種みたいなもんですけど、最初から青色のものが青になるわけじゃない。なんでこの灰色がきれいな青になるんだろうって。

—-いいとのフルプロデュースの時は、何度も現地に行きましたか?

しょっちゅう行ってましたね。でも細かく指定しに行ったわけじゃなくて、企画と思いとある程度の色指定だけ投げたら、あとは陶芸家さんにおまかせしました。
細かく指定すると、その人の良さが出てこないじゃないですか。こちらにもイメージがないわけじゃないけど、そういうのを言い過ぎない方がいい。例えば一つの言葉が引っかかっていいものができなかったりすることってある。だから言わない。その前に感覚的なところは共有できているし。

■自分の役割以外も想像して、創造する

店舗数が増えていくとそういうやり方ができなくなります。「もうあすこにバーンと一括発注しちゃって」みたいになりがち。そうすると既製品的なお店になっちゃう。うちはチェーン店じゃないから、一つ一つを個店経営的に見せたい。だから時間かかっても、こういうふうにいろんな人の手を混ぜつつ店を作ってるんだとスタッフには分かってほしい。料理人だろうがサービスマンだろうが関係なく、もうちょっとクリエイティブに興味を持ってほしいな…。何なら料理人が自分でお皿作れるようにならないと。

—そこまで!(笑)

だって料理人も伸びしろ作らなきゃ。常に料理だけ考えていくっていうサムライ方式じゃなくてね。自分の料理の皿は自分で作るくらいの感覚があってもいい。そうすると、あれをこうしたい、これはどうしようってどんどん出てくると思うんですよ。料理だけ考えてたら幅が広がらない。
僕は、料理載せる皿はどれにしようと考えて、そのお皿をどういうテーブルに載せるかと考えて、そのテーブルの大きさを考えて…そうしてどんどん派生していくと調理器具はこれがいいな、入り口はこうした方がいいかな、ってなる。内装だけ頑張る、料理だけ頑張るじゃなくて、全部、スタイルのプロデュースじゃないですか。そういうのを常に意識してます。そういう意味で器からプロデュースするのは非常に重要なんですよ。

このあいだ二万円くらいするお寿司屋さんに行ったんです。内装はよくできてるんですよ。多分それはプロにお願いしてる。でも寿司を載せる台がチープなプラスチックの台で(笑)一番いい握りを…料理人とお客さんとの橋渡しの部分に一番お金かけないってね。ほんともったいないよね。その人の奥行きを感じなくなっちゃいます。
だからディスカバリーは、料理人もサービスマンも、もっと考えてやらなきゃいけないこといっぱいあると思うんです。ただ笑顔ふりまいて「いらっしゃいませ」っていうことを求めてるわけじゃなくて。田島さん(ディスカバリー取締役)なら「もっと数字興味持とうよ」だし、僕からは「器のところ、もうちょっとやらない?」みたいな。

(器を手に取って)こういう色ってなかなか出ないんです。この釉薬を作ってる人すらもういなくなっちゃって、原料すらないからこれは二度と作れない。僕の中ではこれは白じゃなくて金色に見えるんです。お店の照明落とすともっとこれが濃くなるんですよ。多分陶芸家はそういうことまで想像してるんでしょうね。「東京のお店はお洒落やから多分暗いやろうな、だったらもうちょっとこういう色にしたろかな」とか。
これはどこの何焼きとかいう知識としての勉強はしなくていいと思う。感覚として、イメージをふくらませたりとか、自分たちでもこういうことやれるんじゃないかとかの想像はふくらませてほしいです。

■魯山人と、マイ陶芸場と

—-料理に限らず、その空間を総てクリエイトする感覚でいてほしいなと?

そう。言うなれば「株式会社 魯山人」ですよ!魯山人は自分の世界演出。ディスカバリーも自分たちの世界演出です。

—「僕は料理、あなたはサービス」ってバンと分けてはいけない。

はい。想像しないといけないんです、みんな。特にサービスのことはもっといろいろ想像して創造しないと。
入り口はこうする。石には水を撒こうか。お客さん来たらこれ出してあげよう。この料理にはこの皿がいいな。ここにはこういう花があったらいいな……魯山人って、ごく当たり前のことやってたんだなと思います。
だから「できてない」という意味じゃなくて、ディスカバリーのスタッフは視野をもっと広くして、自分のやることをでっかく考えていいんじゃない?と。

—-スタッフは実際に器焼いてるところを見学したり、陶芸体験もしたとか。

はい。一度全員連れていきました。みんなで作ったし。そうすると実感するんですよね。急に愛が芽生える(笑)
だからもうね、東京に陶芸場を作りたいんですよ。中目黒あたりに。「あそこいつも煙出てるね?」みたいな。そこでスタッフが器作る。お店でお皿割っちゃったら「また自分で作ってきて」って(笑)自分がつくった皿はめちゃくちゃ大事にするだろうしね。
地方から陶芸家がたまに来て陶芸教室のイベントもあるといい。ギャラリーやってもいいですね。器を売るんですよ。陶芸のガスの余った火でコーヒーをローストしてそれを飲めるのもいいな。

—すごい広がり方…(笑)まさに自分たちの世界演出。

逆にいいとikkaiだと、バルだしワイワイ飲んで欲しいからあえて落ちてもいいようなスチールのお皿にしてます。お通しは使い捨ての木の皿だし。それは効率とかじゃなくて演出ですね。1階と地下、逆の演出。
こういう(個人作陶の)お皿は食器洗浄機になかなか耐えられなかったりします。やはりクラフトはもろいところもある。だからいいとでは手で洗ってます。アナログを大切にするのはやはり大変。でも「いまだにそんなことやってんの?」って、必要だと思うんですよ。

会社の裏側にシステム入れてクラウド的なことして、チャットで情報共有とかやっておきながら、この部分はガチでアナログ!みたいなのがいいと思う。やるところとと、残すところと。そういうのはメッセージになるから。「お店100軒やってるのにいまだにそんなことやってるの?」みたいなね。何でも古けりゃいいわけじゃないし、新しけりゃいいわけじゃない。何でも自分たちの感覚で選んだ方がいい。

例えばね、ある大阪の大衆居酒屋に行ったら、レモンサワーとか梅割りとかがセーラームーンのデッドストックのグラスで出てきたんです(笑)うちとは真逆のアプローチですよね。誰がどうやって買ったか、入手経路が分からない。でもそれを見るとそのお店のものだってすぐ分かる。

ものすごいメッセージなんですよ。器も。だから高ければいいとは思わない。値段じゃないですよね。自分たちの価値観をあらわすものであり、お店自体のストーリーでもありますね。

飲食店って本当に総合プロデュースなんです。それで一年中営業できる。展示会じゃないから、ずっと演出しつづけられる。お客さんがたくさん来てくれればずっと提案し続けられる。ずっと新たな発表会なんです。だから料理とサービスだけじゃなくて、もっともっとスタッフみんなで、広く想像して創造したいなと思います。

★インタビューに登場した陶芸家プロフィール

余宮隆
1972年生まれ。19歳で唐津「隆太窯」より陶芸の修行を始める。中里隆氏に師事。24歳で帰郷、天草「丸尾焼」で修行。30歳天草本町に工房と窯を築く(朝虹窯)。現在個展を中心に活動中。

川口武亮
1974年生まれ。26歳で有田窯業大学校ろくろ科、絵付科を卒業。翌年から番浦史郎氏に師事、三重県阿山「音羽山坊」にて修業。2002年、花岡隆氏に師事。2005年、有田にて独立。